「これほどおいしいクッキーは初めて食べた」。そんなお声をいただくほど、人気のバタークッキー。おいしさの理由や素材について、ツマガリ社長にトコトン語ってもらいました。
津曲:
当時はまだ生菓子しか作っていなかったから、クッキーはその合間をぬってスタートしたんです。
クッキー生地をつくって棒状にのばして、紙でクルクルっと巻いて、冷蔵庫で冷やしておく。そして、オーブンが空いた時間に、クッキー生地をカットして、焼きあげた枚数だけを販売するというものでした。せいぜい鉄板3~4枚分くらいだったかな。
もちろん、素材や製法はどんどん進化しているけれど、シンプルな見かけは当時のまま。いわゆる「素焼き」のクッキーです。卵を塗ってつや出しするなど、飾りっけはなし。側面にオーガニックシュガーをまぶしているくらいで、それ以外は素顔で勝負です。
津曲:
人間もそうだけれど、素顔の状態はいちばん健康状態がわかるでしょ。クッキーも焼き加減がいのちだから、分かりやすいのが一番なのです。
クッキーの表面を見てもらうとね、外側部分と中央部分では、焼き色がすこしだけ違うのがわかりますか?割って断面をみても、外側のほうが色味が濃い。これは焼いたときの温度の伝わり方で異なるのですが、この微妙な変化がおいしさの奥行きをひろげているんです。
津曲:
もっと分かりやすいのは、シュークリーム。シュー皮の断面を見てもらうと、空洞の内側と、表面ではまったく違う生地のようでしょ?
空洞の内側は、クレープみたいにつるっとしているから、カスタードクリームに触れても水分が移動しにくい。パリッとしたシュー皮と、しっとりしたクリームを分断する役割を果たしています。
逆に、外側はしっかり焼くことで、焼きの味つけが加わって香ばしくなる。シュー皮だけ食べても、二層の食感や風味がおいしいでしょう?
クッキーも、それと同じようなことなんです。だから、食べていくうちに、味わいが何段階かでたのしめる。
とくに、バタークッキーはよく焼かないといけないから、焼き方がむずかしいんです。「よし、今が一番おいしいな」ってところで、焼きを止めないといけない。
津曲:
「出してくれ」と言うんですよ、クッキーが。
津曲:
そう。クッキーが語ってくれる。菓子職人は、お菓子と対話できるようにならないといけないんです。
焼き菓子はどれもそうですが、たとえレシピ通りに配合しても、その日の気温や湿度、材料の微妙な具合によって生地の様子がかわるので、それを見極めるのが職人の腕の見せどころ。なかなか、言葉で伝えるのはむずかしい話ですけどね。
津曲:
別に自慢するつもりはないんです。ただ、一生懸命に作っているだけ。
バタークッキーにかぎらず、ツマガリは素材にも製法にも、他人さんが聞いたら呆れるくらいにこだわっている(笑)。そんなお菓子をおいしいと喜んでいただけたら、それで満足なんです。
津曲:
このバターは、焼くことで香ばしい風味が立ってくる。だから、うちのクッキーや焼き菓子には欠かせないバターです。クッキーの小袋をあけたときに、ふわっといい香りがするでしょ?
もし、冷蔵庫から出したところなら、両手のひらでしばらく温めてみてください。そうすると、発酵バターがやわらかくなって、クッキーの味がほどけてくる。そうやって召し上がっていただくと、よりおいしいと思います。
津曲:
これがまた、大変な作業でね(笑)。ツマガリ専用の乳酸菌をえらんで、それで発酵バターを作ってもらっているのですが、乳酸菌だから数年経つと働きが弱くなってくる。その微妙な変化をみながら、弱くなってきたなと思ったら、あらたな乳酸菌をえらぶんです。
いろいろな乳酸菌のタネを持ってきてもらって、選んだものでバターを試作してもらって。それでバタークッキーを焼いて、味を比べながら最終的に決める。
津曲:
日々、こんなことの繰り返しです。バターだけでなく、小麦粉や砂糖、チョコレート・・・。配合も「これで完成」ということはあり得ないから。(そう話しながらも、工房から製造本部長に電話をかける社長。2時間のインタビューで5~6回も!)。
でも、毎日毎日やっているから、小さな進化がおこる。だから、昨日よりも今日は少しずつおいしくなっていくんです。
津曲:
そうですね、いまだに悩んでいますよ(楽しそうな顔)。素材自体がとてもいい風味をもっているので、余計なことはしたくないからね。でも、アーモンドでもりんごでも、そのまま食べるよりお菓子にすることで、もっとおいしくならないと意味がないから。
ちょっと。トゥルル、トゥルル・・・(7回目の電話が、工房にかかっている)。
0120-221-071
0798-72-1846
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